「予測不可能」。
それがレースの世界。
何が起きるか分からないというのは選手にとって大変な部分でもありますが、技術面・精神面の成長に大きく関わってくることは間違いありません。
Jujuは、そうした厳しい勝負の世界で戦っている一人です。
Jujuの父であり元プロのF1ドライバーでもある野田英樹監督に、彼女のこれまでの歩みと将来への展望についてお聞きしました。
◆野田監督から見た「レースの世界」
「金銭的にも大変だし、体力的にも厳しい世界」と監督は語ります。
レースの世界についてお伝えするにあたって、やはり人種問題は根深い問題。決して避けては通れないものと言えるでしょう。
-Juju選手の活躍について、どう思われますか?
やっぱりレーシングドライバーは男性の割合が圧倒的に多いわけです。Jujuのような女性のレーシングドライバーも増えてきてはいますが、全体的に見ると決してまだ多いとは言えません。
17歳という年齢でレースに出場して結果を出すことの難しさは、自分自身が競技経験者だからこそよくわかります。野田英樹の娘だから、環境が良いから、DNAがどうだから、という話ではなく、Jujuは客観的に見ても難しいフィールドで戦っていると思います。
-驚異的な才能の開花だと思うのですが
フォーミュラ4選手権で最年少デビューしたのが9歳です。
日々技術を磨くなか数々のレースに参加して、Jujuのレーシングドライバーとしての頭角も徐々に現れてきているのではないでしょうか。デビューから数年で、数々のレースでトップを獲ることも増えてきました。
今のままの勢いなら、本人の言う通り「日本人初の女性F1/フォーミュラEのドライバーになって、チャンピオンになる」という将来的な目標も、決して夢ではないと思います。
-上位クラスへのステップアップについてはどうお考えですか?
Jujuがやりたいと思うなら、親も本気の覚悟でやるだけです。
今のJujuには親という視点を割り引いて考えても勢いがあります。技術向上や入賞経験を経て自信も付いてきています。Jujuが「上位クラスのレースに挑戦したい」と思うのも自然な流れだと、そういうことだと捉えております。
-ステップアップに必要なことは?
レーシングの技術を磨き、さらに上のレベルで切磋琢磨していく。新しい挑戦を止めない姿勢は本人の強みです。その姿勢こそが、次のステージに進むうえで重要だと思っております。
もちろん上位に進めば進むほど、簡単に結果を出すことは難しくなりますし、体力的にも精神的にも苦しい場面が増えてくるでしょう。レースの世界は競争が激しいですし、生半可な覚悟では生き残れません。
-親でもあり、一人の経験者でもあり、というところから率直なところをお聞かせください
レースを続けるには金銭的にも大変だし、人種差別も無視できない問題です。体力的にも大変なのを知っているから、私自身も半端な覚悟ではやっていません。
私はJujuの父でもあり、監督でもあります。Jujuの挑戦に向かって、全力でサポート出来れば良いと思っています。
-先日のBOSSグランプリについて、どう思われましたか?
BOSSグランプリでのパフォーマンスには、挑戦を続けるJujuらしい姿勢が現れていたと思います。
ほとんど練習せず、いわば「ぶっつけ本番」の状況で600馬力のマシンを操る。親の視点を一切捨て、Jujuが自分の娘だからどうこうも無く、競技経験者として客観的に見ても決して簡単なことではありません。
今の実力なら、より高いクラスのレースでも十分に戦えるかもしれない。今回のレースで、プロ経験者として、監督として。希望が確信に変わっております。
◆プロの目から見たJujuの成長と未来
プロのレーシングドライバーでもある野田英樹監督の視点から、Jujuがこれまで歩んできた道のりと挑戦・未来についてお伺いしました。
-父として思うことは?
正直、「Jujuは元プロドライバーの娘だから」「環境がいいから」という声が聞こえてくるのも事実です。
でも、私がサポートしているのは親子だからとか環境に恵まれているとかの話ではありません。17歳の女性が、それもプロとしてレースの世界で戦うのはかなり厳しいこと。本人の意思は固く半端なものではないですし、毎日の積み重ねが結果として出てきていると思います。
先ほども話しましたが、Jujuが本気で覚悟を持ってやるというから、チームJuju一丸となって、Jujuが全力を発揮できる環境づくりをサポートしていくだけです。
-ズバリ、Juju選手の一番の強みは?
本人も言っていますが、Jujuの強みは「負けても負けても諦めない」気持ちの強さと覚悟です。Jujuは小学生でF4、中学生の時にはF3に乗っていました。
負けず嫌いで挑戦を恐れない性格は子供のころから変わりません。何事にも果敢に挑戦する姿勢と覚悟の強さは、客観的に見てもリスペクトを持ってよい部分ではないかと思っております。
-今後期待することは?
Jujuには、今までの経験を活かしてさらに上のステージを目指していってほしい。そう考えております。将来的にJujuがF1に挑戦するためには何が必要か、どんなことをすればいいのか、私にはそのステップがはっきりと見えています。
目標を見据えると乗り越えるべき課題もあることも事実。何度も言いますが生半可な世界ではなく、金、人種問題、しんどいことは山ほどあります。レースで戦う厳しさも、経験が増えるにつれてより強く実感していると思います。
いつかやらなければいけないし、やるからにはより良い結果を出したい。早いうちに挑戦したほうがいいですよね。
-女性レーサーの活躍も見えてくると?
今年はZinox(Zinox F2000 Formula Trophy)でいきなり年間チャンピオンを取りに行ったのですが、女性としては初めてだとのことで。
現状、女性レーサーの数はそう多くありません。しかしJujuが結果を残していけば、今後のレースの世界の風向きは大きく変わっていくのではないかと考えております。
-応援している皆さんに向けて一言お願いします
Jujuがレーシングドライバーとして様々な舞台やフィールドで力を発揮できるのは、もちろん本人の実力だけでなく、応援してくださっている皆様の声があるからこそです。
これからもレースで結果を残し、より多くの方に応援していただける選手になるべく、励んでいきます。
【お知らせ】
野田英樹への講演依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。