監督の仕事のみならず、エンジニアとして、時にはマネジメントや営業活動も行うなど、全力で様々な活動に取り組む野田秀樹監督。
Juju選手の実力をより引き出すためには、チームJujuのサポートが欠かせません。幅広く活動を行う原動力はいったいどこにあるのか、ならびに、父としてのJuju選手への思いについてもお聞きしました。
◆現役時代の経験が大きな原動力に
野田秀樹監督は、現役時代にヨーロッパで経験を積み、F1ドライバーとして活躍した日本を代表する選手の一人です。
現役引退後は、娘であるJuju選手のサポートメンバーとして、日夜さまざまな役割を担っています。パワフルに活動する原動力は、現役時代に培われたものだと野田監督は語ります。
-現役時代から「自分で動く」がモットーだった?
私は、現役時代から自分で動かなければいけない場面が多かったように思います。
レーシングドライバーとして、ヨーロッパでメーカーの支援を受けずに結果を出すには、まず自分が動くしかありませんでした。後ろ盾も何もない状態だから、プライベートで動くしかないわけです。
正直なところ、「やりたくてやった」というよりは「やらざるを得なかった」というのが正しい表現かもしれません。
-世界を舞台に闘うには、自分で動くしかないと?
常に自分でいろいろなことを進めていかないと夢は決してかなわないし、やりたいことも実現できません。決して妥協せず、やれることがあるなら最後まで、プライベートの時間と体力、使える手段を全部使ってやりきるしかないんです。
自分で動けば、周りとのつながりも生まれます。これは自分にとってもプラスになることは間違いない、だから、率先して自分で動いてきました。
◆チーム全体でJujuを支える
チームJujuは、野田秀樹監督とチーフメカニックの谷嶋邦彦氏、メカニックの竹本篤司氏、チームマネージャーの野田雅恵氏で構成されています。
Juju選手本人の実力はもちろん、チーム全員のサポートが相乗効果を生み、これまで多くの舞台で結果を残してきました。「選手時代の経験が活きている」と、野田秀樹監督は語ります。
-ご自身の経験はJujuのサポートに活きている?
現役時代に自分で動いた経験は、確実に今の自分にも活きていると感じます。
決して親だからという話ではなく、Jujuは私よりも才能にあふれる選手の一人だと思います。頑張っている選手がいれば応援したいというのは、経験者であれば誰でも思うことでしょう。
正直なところ、もしJujuが本気で頑張っていなければ、私もここまで全面的なサポートをすることはないでしょう。
でも、実際Jujuは目標に向かって全力で突き進んでいます。彼女自身が覚悟を決めているのだから、私は全力でサポートするのみです。
-サポートで心がけていることは?
私が現役でやっていた時以上のことをやらなきゃいけないというのは常に思っています。
将来有力な選手がいるなら、経験者としてより結果を出せるようにサポートしたい。その選手がJujuだったというだけの話です。
-親心ではない?
単に親心だけだったら、娘があんな厳しい世界に飛び込むなんて、心配や不安な気持ちが勝るんじゃないかと思います。
ドライバーの先輩として言わせてもらうと、Jujuにはやっぱりセンスがあると思うんです。
F4のレースで結果を出せるようになってきて、最近は特に勢いもある。このまま行けば、もっともっと上のカテゴリーで活躍する日も近いかもしれないですよね。
女性ドライバーはまだまだ少ない現状にあります。女性ドライバーがレースの世界で結果を残していく、これはすごく夢のある話だと思うんです。やっぱり、彼女が夢を実現するところを見たいなという思いもありますね。
-野田監督からは、Juju選手への計り知れない愛を感じます
もちろん親だから、親として自分の子供が可愛いっていうのは、どこの家庭でも基本はそうだと思います。
世の中には残念なニュースも聞きますが、そうは言っても親だからこその気持ち、親心なんじゃないかなと。頑張る姿を応援してあげたいっていうのは、誰でもあると思うんですよね。
-関係自体は他の親子関係と変わらない?
親子関係は、多分そんな別に人とは変わらないと思います。
でも、Jujuに関してはやっぱり一人の競技者として見なければいけない部分もある。親子だからといって甘やすのは違います。
今のチームで競技を続ける以上、Jujuと私は選手と監督です。親としての気持ちと競技者としての気持ちは、しっかり切り離して考えるようにしています。
3歳の時からずっと2人3脚でやってきました。Jujuの、どんなことがあっても乗り切る気持ちの強さは、カートデビューした日から全く変わりません。
ブレないで一つのことをやり続ける、目標に向かって努力し続けるというのがいかに大変かというのは、レース経験の有無に関わらず多くの方が感じることだと思います。
Juju自身が努力を重ねているんだから、やっぱり応援してやりたい。周囲にいる人間がそう思うのは、ごく自然なことなんじゃないでしょうか。
-頑張っているからこそ応援したくなる?
そうですね、いくら自分の子供だとしても、真剣にやっていないのであればここまでサポートしようと思わないはずです。子供が好きではないことを親が強制させたり、全てを見守る必要は決してないと思います。
先ほども申し上げたように、私がJujuを全力でサポートするのは、何よりもレースを優先させて真剣に向き合っているから、生半可な気持ちではないと十分に分かっているからです。
-Juju選手本人が全力だからこそ、監督も全力でサポートすると
そうですね。彼女は覚悟を決めて、本当に全てを投げうってレースの世界で戦っているわけです。
Jujuも、世界を舞台に活躍し始めてはいるけれど、レース以外ではまだ17歳の女子高生です。Jujuだって10代の、高校生なりの楽しみもあるはずだし、競技以外にもやりたいことがいっぱいあると思うんです。
そんな中で、でも自分はそれよりもやっぱりレースを頑張りたいと。覚悟を決めてやってるわけですから、Jujuの姿勢を応援しようと決めました。
子供だから、愛情はもちろんありますよ。でもそれだけではない。競技経験者として見ても、Jujuには可能性がある。やっぱりこの才能を潰しちゃいけないと思います。
-Jujuの活躍がレース全体に与える影響も大きい?
厳しいレースの世界で、一人のアジア人としてJuJuがもしもF1に行くようなことがあったら。F1じゃなくても、もしも世界選手権で勝つようなことがあったら。本当にすごいことだと思います。
アジア人の女性がレースで活躍するというのは、今後のレース界にとっても大きな意味を持つこと、ひいては今の社会全体にも何か一石を投じる出来事になるのではないかと考えています。
未来を担う存在が一番自分の身近なところにいるのであれば、今後のレース界のためにも全力でサポートしようと思います。
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