「全日本スーパーフォーミュラ選手権」(以下、スーパーフォーミュラ)の開幕戦が、2024年3月9日と10日に鈴鹿サーキットで開催されました。
TGM Grand Prixから参戦したJujuにとって、スーパーフォーミュラのデビュー戦は期待と重圧が入り混じる特別な舞台。
スーパーフォーミュラへの日本人女性ドライバー初参戦にして最年少記録保持者としても大きな期待が集まりました。
Jujuの父であり元プロのF1ドライバーでもある野田英樹監督に、開幕戦の感想をお聞きしました。
◆開幕戦を終えて
TGM Grand Prixとしても、Jujuとしても初挑戦となる開幕戦。
さまざまな困難を乗り越えて走り切った今回のレースについて、野田監督は「100点満点だし、久しぶりに感動した」と振り返ります。
-今の率直なお気持ちは?
最高ですね。
今回のレースは、本人としても普段とは状況が違う。練習ができない中でチャレンジをしなきゃいけない、しかもハードルは決して低くはない状況の中でよくやったと思います。
スーパーフォーミュラに日本人女性が参加するのも初めてだし、Jujuは参加者の中でも史上最年少だったわけです。
そうなるとやっぱり話題にもなりますし、周りの目も気になる。ポジティブな意見もあれば、ネガティブな意見ももちろん聞きました。だから、本人的にもリラックスして試合に臨める環境ではなかったと思うんですよね。
そんな中で、チームは一生懸命Jujuのサポートをしようと頑張ってくれて、Jujuもそれに応えようと頑張った。文句のつけようはないんじゃないですか。
-開幕戦を迎えるまでにはいろいろあったのでは?
チームとJujuの意思の疎通の問題も、やっぱりありましたよね。
本格的なテストは2日間のみという限られた時間の中で、チームとのコミュニケーションの課題を克服するのは難しい。
実際、初日のレースにはそれが顕著に現れましたし、チームの本来持っているポテンシャルはもちろん、Juju自身のポテンシャルも出しきれずに苦しい中で1日が終わったわけです。
そんな中で、悪い流れを断ち切るように、チームもJujuもレース後からできる限りのことを精一杯やっていたのが印象的でした。
◆Juju選手の驚きのパフォーマンス
レース中のJujuの走りは、多くの観客の注目の的となりました。
レースでは、コースアウトもありながら最後尾からの追い上げを見せるなど、ベテラン勢をも驚かせるパフォーマンスだったと野田監督は語ります。
– ベテラン勢に引けを取らない走りぶりだったと?
あんなレースになると思ってなかったのは正直あります。
やっぱり、レースって用意ドンしてからは未知の世界なんです。チームの支えがあってこそなのはもちろんですが、レース中のJuju本人の苦しさは計り知れない。
あの状況で、どうやって完走するのかって思ってた人も多いと思いますよ。
でも、いろんなデータやこれまでの流れを見て、チーム全体で適切に支えればちゃんと戦える。Jujuの担当してるエンジニアであったり、俺自身であったり、チームと本人との歯車が合えば、苦しいレースだって戦えるわけです。
– Juju選手のポテンシャルとチームのポテンシャルが発揮できたレースだったと?
コールドタイヤは一瞬離されましたけど、タイヤが温まってから今度は逆に何年もやってるベテラン勢にじわじわ追いついていって。本当に、Jujuの活躍ぶりは想定以上でした。
レース前は半日トライしか走れませんでしたし、決勝のシミュレーションもしてない。そんな中で決勝レースの走りは簡単にはできません。
ピットもちゃんと練習通り止められましたし、ピット作業も本当に速かったですよね。
Jujuのポテンシャルも出せて、チームであるTGM(TGM Grand Prix)のポテンシャルもちゃんと見せられた、良いレースだったんじゃないかと思います。
◆今後に向けて
鈴鹿サーキットでのレースは、Jujuとチームにとって手応えのある開幕戦となりました。その一方で、課題も見えてきたと野田監督は語ります。
開幕戦を終え、今シーズンの活躍に期待が膨らむ中で、今後の課題や伸びしろについても伺いました。
-今後の課題やさらなる伸びしろについては?
もちろん、今のJujuにはタイヤの使い方や温め方まで、いろんな課題があります。
タイヤ交換の後のコールドタイヤの怖さは、自分もやってたからよくわかりますよ。現役でやってるときは平気だって言ってましたけど。正直「しびれるな。こんな滑るタイヤでアウトラップ頑張らなあかんのか」って思いながらやってましたね。
Jujuにはまだまだ伸びしろがあります。課題がたくさんある中で今回のようなレースができたわけですから、さらに腕を磨いていったらどうなるんだろうなと期待もしています。
-レース中のJuju選手への応援の声が印象的だったと?
S字でのレース中も、Jujuを応援してくれる声が聞こえたんです。終わってからJujuが前を通ったら拍手してくれて、あれには感動しましたね。
周りの人みんなが私に「良いレースでしたね」って言ってくれたのも嬉しかった。
-ピットに戻ってきたJuju選手と最初に交わした言葉は?
「最高のレースだったね」と。何よりも、Jujuが多分嬉しいだろうなと思った言葉を伝えました。
Jujuの担当してるエンジニア2人が、レース後に涙してくれた。こういう光景は、ヨーロッパのレースでは経験してこなかったわけです。
今回のレースはNODAレーシングとはまた違ったアウェイの状況でしたし、ここまで想ってくれていた事自体がJujuもすごく嬉しいんじゃないかと。だからそれを最初に伝えました。
-今シーズンのJuju選手に期待大
日本人女性ドライバー初、そして史上最年少でのスーパーフォーミュラ参戦という歴史的な一歩を踏み出したJuju。
今シーズンのスーパーフォーミュラは、Jujuの成長を目撃できるまたとない機会になるでしょう。
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